1989年開催の横浜博覧会で、JR東日本は桜木町駅前に「夢空間'89」と題して、人気の寝台特急「北斗星」の利用をさらに広げるべく、明日の寝台特急の夢を広げるような実車の展示を約半年間行ったものである。
展示試作車両は、豪華な寝台車「デラックススリーパー」、ホテルのラウンジの雰囲気の「ラウンジカー」、機能性とともに気品と優雅さのある「ダイニングカー」の3両で、それぞれ日本車両、富士重工、東急車輛が受持ち、各社のデザイン力や工夫を凝らして製作されたものである。
博覧会場に来る多数の方々の意見をこの後のポスト「北斗星」の設計、製作に活かす狙いがあった。
生産技術
基本的な車体、電気システム、台車、ブレーキ方式等は最新の24系25形と同一とすることとし、将来同種形式との編成組み込みを可能としている。
開発コンセプトは、次のとおり。
(1)従来の車両のイメージを払しょくすること
(2)列車に乗ることにより生ずる車内生活が楽しく、優雅であること
(3)超近代的なものから、トラディショナル(伝統的)なものを重視し、本物志向に近づける
デザインコンペにより選出された3社それぞれが、1車種づつ分担して請け負い設計、製作された。
<オロネ25 901 デラックススリーパー>
・1両に3つの個室を持つ。豪華で極めて快適な居住性を持つスイートルームとし、従来車両にないタイプとし、シティホテルをイメージしてつくられた。まさに、動くホテルを目指したもの。
・バス・トイレユニットは、この車両のために新設計した難燃性のFRP製ユニットタイプ。洋式のバスタブでなく、日本人向けに家庭用の深いタイプとしている。
<オハフ25 901 ラウンジカー>
・エレガントエキスプレスを基本コンセプトに、ヨーロッパの「オリエント急行」の上を目指した超豪華な車両と位置付け、アールデコ基調のデザインがほどこされた。
・超一流のホテルラウンジの雰囲気漂う室内デザインと最高級調度品が使われている。
<オシ25 901 ダイニングカー>
・内装は、ヨーロッパ調と現代感覚を加味した機能と気品と優雅さを第一テーマとしている。
・最後尾車とし、大型の曲面ガラスを使った展望窓を設けた。車両として貫通扉が1か所しか無いため、異常時対策として部屋の中央部に非常口を設け、天井には煙感知器を取り付けている。
時代背景
「オリエント急行」がイベントで日本を運行したのが1988年10月〜12月であった。また、1988年3月からスタートした上野〜札幌間の寝台特急「北斗星」が特に個室を中心に人気が非常に高まった時期であり、豪華列車に対するあこがれが芽生えていた時代である。
記事
横浜博覧会閉幕後、同1989年の10月25日、JR東日本が主催した世界鉄道デザイン会議の特別列車として海外から参加した人たちを乗せて、日光〜池袋間に初運転された。その後は、「北斗星」の特別な臨時列車として、トマム方面へのスキー列車で営業を開始している。