1969

新系列 急行用客車 12系の登場

オハ12形、スハフ12形、オハフ13形ほか

記事番号P290

 12系客車は、1969年(昭和44年)から1978年(昭和53年)まで、合計603両を製造した急行形座席客車である。
 分散式冷房装置を搭載し、側開戸は、客車初となる車掌扱いによる自動扉の採用など旅客サービスや安全面の向上に大きな成果を挙げた。
 客車初の分散電源システムの採用による編成組成の柔軟性を持たすとともに、2段式ユニット窓やFRP製ユニット便所の採用などでコストダウンをも図るなど、多くの技術面でその後の国鉄客車の基本となった車両である。

生産技術

 車体は、在来客車の設計の概念を脱却し、急行形電車の設計を基本的に踏襲して車体幅を約10cm拡大して2.9mとした。
 車体長も20.8m(全長21.3m)に拡大することで座席間隔を1,580mmに広げ、人間工学を考慮した腰掛を採用している。
 その他の改良点は以下の通りである。
・全車に空気バネ台車を標準装備(新開発のTR217系台車)。乗り心地を改善した。
・新開発のCL形応荷重機構付自動ブレーキ装置の採用。ブレーキシュー材質は、従来の鋳鉄に代わり、高速域からの安定した制動力が得られるレジン樹脂に変更。
・国鉄客車としては初めて自動ドアを採用。電車・気動車並みの安全性を確保した。
・2段式のユニット窓構造。これらは、同時期の電車や気動車にならったもので、生産性や整備性を改善している。
・スハフ12形には、床下のディーゼル発電機で自車を含めて6両(当初5両)に電源を供給する「分散電源方式」を初めて採用した。

時代背景

 当初は、1970年(昭和45年)の日本万国博覧会(大阪万博)輸送を念頭に、臨時列車・団体列車を含めた波動輸送用車両として製造された。
 既に、電車・気動車が旅客輸送の主力となっていた時期であるが、波動輸送用にあえて客車として製作された。

  • オハ12形
    出所:「100年の国鉄車両」(交友社)

  • スハフ13形
    出所:「100年の国鉄車両」(交友社)

  • スハフ13形 室内
    出所:「100年の国鉄車両」(交友社)

  • 中央西線の臨時急行に活躍する12系急行形客車
    出所:「100年の国鉄車両」(交友社)