EF56形は、国鉄の前身である鉄道省が、1937年から製造した直流用電気機関車である。
本形式は、旅客列車牽引用に性能的にはEF53形をベースに、暖房用の蒸気発生装置(SG)を追加して冬季の暖房車の連結を不要とした画期的な形式である。
1937年から1940年にかけて、三菱電機・三菱重工業、川崎車輛・川崎造船所、日立で合計12両が製造された。
生産技術
蒸気発生装置の取扱いの都合で両運転室の背面に設置したため、パンタグラフはEF53形と比べて中央に寄せて取り付けられている。また、同じ理由で機器室内の抵抗器室を設けることができず、機器室内中央部に抵抗器を設置したため、機器室内の温度が高くなり、後に機器室内の排気専用のベンチレータを取り付ける改造を行った。
13号機として製作されていた車両は、出力増強型の電動機を装備したため、EF57形(EF57 1)として落成している。
時代背景
当時、電化区間専用の一部の客車には、電気機関車から1500Vの電力を受けて、電熱線を使用した暖房をもつものもあったが、蒸気機関車けん引を前提とした多くの客車は、機関車から供給された蒸気を利用して暖房を行っていた。このような客車を電気機関車でけん引する場合は、機関車と客車の間に石炭だきのボイラをもつ暖房車を連結して運行を行っていた。EF56形は、一方の運転室の後方に重油だきのボイラを、もう一方の運転室の後方に水タンクと重油タンクを設置し、EF53形よりも10t程度重くなったが、半自動でボイラを運転することができた。これによって、冬季、暖房車をけん引するためロスしていた引張力を有効に活用できるようになった。
記事
主要仕様
・軸配置 2C+C2
・1時間定格出力 1350kW(MT17A×6)
・歯車比 2.63
・最高速度 95km/h
・質量 108.88t
・制御方式 抵抗制御、3段組み合わせ制御、弱め界磁制御