1912

東海道線山北・沼津間勾配区間用マレー式テンダ機関車 9750形、9800形、9850形

9020形、9750形、9800形、9850形

記事番号J460

 東海道線の山北・沼津間の勾配区間の輸送力増強のため、マレー式大形テンダ機関車を導入することとなった。
 大形テンダ機関車の導入に先駆けて、米国Alco社から前部台車がB形、後部台車がB形と主台枠が2つに分れたB+B形軸配置のマレー式機関車本体のみを購入し、国内で炭水車を製作するとともに、前部台車に先輪を組み込む改造を行った1B+B形マレー式テンダ機関車9020形を用いて、乗務員及び技術者の教習を行った。
 1912年には、本格的な使用を目的とした過熱蒸気を使用するC+C形マレー式テンダ機関車9750形24両、9800形18両、9850形12両を導入した。

生産技術

<形式:9020>
・軸配置・機関車形態: 1B+B形テンダ機関車
・製造会社:Alco Schenectady
・製造年度・両数:1911年(6両)
・機関車質量:63.3t(軸重14.2t)
・動輪直径1245mm
・記事:飽和蒸気複式機関車(後部台車側:高圧、前部台車側:低圧)

<形式:9750>
・軸配置・機関車形態: C+C形テンダ機関車
・製造会社:Alco Schenectady(米国)
・製造年度・両数:1912年(24両)
・機関車質量:64.7t(軸重11.0t)
・動輪直径1245mm
・記事:過熱蒸気複式機関車(後部台車側:高圧、前部台車側:低圧)

<形式:9800>
・軸配置・機関車形態: C+C形テンダ機関車
・製造会社:Baldwin(米国)
・製造年度・両数:1912年(18両)
・機関車質量:64.7t(軸重11.0t)
・動輪直径1245mm
・記事:過熱蒸気複式機関車(後部台車側:高圧、前部台車側:低圧)、動力逆転装置を装備、後に関西線でも使用

<形式:9850>
・軸配置・機関車形態: C+C形テンダ機関車
・製造会社:Henschel(ドイツ)
・製造年度・両数:1912年(12両)
・機関車質量:67.2t(軸重11.3t)
・動輪直径1245mm
・記事:過熱蒸気複式機関車(後部台車側:高圧、前部台車側:低圧)、後に信越線でも使用

記事

 1両の機関車に2両分の走り装置をもつマレー式機関車は、出力の向上、軸重及び横圧の低減が期待でき、急曲線に対応できるなどの特徴から、輸送力の大きい路線や勾配路線に向くとされ、ヨーロッパ、アメリカで発展した。
 特に大形機関車が望まれていたアメリカでは、後に世界最大の蒸気機関車ビッグボーイ(ユニオン・パシフィック鉄道)が誕生した。
 しかし、日本では構造が複雑で保守点検が困難なことから、箱根越えにおいても9600形にその地位を譲り、短期間の試用に終わった。

  • 9020形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)

  • 9750形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)

  • 9800形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)

  • 9850形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)