1912

鉄道院発足後、初となる国産貨物列車用機関車 9550形、9580形

9550形、9580形

記事番号J450

 鉄道院総裁の後藤新平が進めた鉄道院向け機関車の国産化の第2弾として、貨物列車用の大形1D形テンダ機関車が川崎造船所所の太田吉松らの手によって1909年頃から設計が進められ、1912年に飽和蒸気式の9550形及び9580形(完成当初は9600形と命名)が川崎造船所兵庫工場で製造された。
 飽和蒸気式の9500形は、初めての設計もあり、軸重が重く、期待した性能が得られなかったため、増備車は過熱式の9580形になった。
 一方、9580形の過熱装備は、1911年に輸入された8800形及び8850形を手本としたものであったが、更なる性能向上を図るためボイラ容量および火室構造の改良が計画されたため、9580形の増備が行われることなく、新たに1D形テンダ機関車9600形を設計することとなった。

生産技術

<形式:9550>
・軸配置・機関車形態:1D形テンダ機関車
・製造会社:川崎造船所
・製造年度・両数:1912年(12両)
・機関車質量:60.6t(軸重14.2t)
・動輪直径1250mm
・記事:飽和蒸気式

<形式:9580>
・軸配置・機関車形態:1D形テンダ機関車
・製造会社:川崎造船所所
・製造年度・両数:1912年(12両)
・機関車質量:60.7.t(軸重13.9t)
・動輪直径1250mm
・記事:過熱蒸気式

 川崎造船所では、欧米各国の優れた機関車について研究を行い、1909年にシュミット・ヒーティング社(ドイツ)の過熱器の製造販売権を取得していた。この過熱器を初めて採用したのが9580形であったが、後の9600形にも採用され、輸入機関車にも勝る優れた機関車と評価されることになった。

時代背景

 日本の国土にあった蒸気機関車の仕様・構造への探求は、開業当初から輸入又は輸入機関車の模写製作を行うなかで続けられてきた。
 蒸気機関の効率改善という命題に対しては、飽和蒸気を2段階に使用する複式シリンダの採用などを経て、明治後期に飽和蒸気を過熱して用いる過熱蒸気式の優位性が確認され、以後の国産機関車は、すべて過熱蒸気方式を採用することとなった。

  • 9550形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)

  • 9580形
    出所:「100年の国鉄車両」(株式会社 交友社)