日本鉄道は、1982年に水戸鉄道(現在の水戸線)を譲渡されたのち、延伸を繰り返し、1897年に水戸〜平間が開業し、1898年には、田端〜岩沼間(現在の常磐線)が全線開通することをうけ、同沿線で算出する常磐炭をを輸送する貨物用として1D1形テンダ機関車9700形、沿線の旅客輸送用として2B1形テンダ機関車6600形を導入した。
9700形は、後のD51形と同じ1D1の軸配置をもつ大形の機関車で、この機関車を製造したBaldwin社にとって初めての軸配置となったことから、この機関車の軸配置を日本にちなんで「ミカド(帝)」と名付けたことでも有名となった。一方、6600形も日本で唯一導入された2B1形テンダ機関車であった。
生産技術
両機関車は、沿線で算出する発熱量の低い常磐炭を燃料に使用するため、その上に通常の1D形や2B形機関車の2倍程度の面積をもつ大きな火室が必要となった。そのため、両機関車ともに従台車を設け、その上部に火室を配した1D1形及び2B1形軸配置を採用した。
<形式:9700>
・軸配置・機関車形態:1D1形テンダ機関車
・製造会社:Baldwin(米国)
・製造年度・両数:1897年(20両)
・機関車質量:54.3t(軸重11.9t)
・動輪直径:1118mm
・記事:低発熱炭を考慮した大きな火室を採用
<形式:6600>
・軸配置・機関車形態:2B1形テンダ機関車
・製造会社:Baldwin(米国)
・製造年度・両数:1897年(24両)
・機関車質量:45.4t(軸重11.8t)
・動輪直径:1422mm
・記事:記事:低発熱炭を考慮した大きな火室を採用
時代背景
1880年代半ばから、官営であった炭鉱・鉱山、造船所、セメント工場、紡績工場などが民間に払い下げられ、大形輸入機械を導入することで工業化が始まり飛躍的に生産量が増加してきた。また、特に軽工業においても1897年に発明された豊田式木製動力織機などの国産力織機によって小工場に転換する動きが進んだ。また1901年には官営八幡製鉄所が設立されるとともに民間製鉄所の設立が相次いだ。
記事
上記の9700形、6600形と同様に低発熱炭用大火室もつ英国製機関車として、3800形及び5830形を翌年に導入している。3800形と5830形は、動輪直径、シリンダ、弁装置など、共通設計が行われていた。
<形式:3800>
・軸配置・機関車形態:2C1形タンク機関車
・製造会社:Dubs(英国)
・製造年度・両数:1898年(4両)
・機関車質量:54.8t(軸重11.5t)
・動輪直径:1372mm
・記事:低発熱炭を考慮した大きな火室を採用
<形式:5830>
・軸配置・機関車形態:2B形テンダ機関車
・製造会社:Dubs(英国)
・製造年度・両数:1898年(4両)
・機関車質量:39.7t(軸重13.1t)
・動輪直径:1372mm
・記事:低発熱炭を考慮した大きな火室を採用