1896年、九州鉄道は、アメリカBaldwin製の1C形テンダ機関車8200形(初代)を導入した。
8200形(初代)の同系統機関車は、同じ九州にある筑豊鉄道が1892〜95年に導入したアメリカBaldwin製8000形7両、関門海峡を挟んだ山陽鉄道が1894年に導入したBaldwin製8350形4両が存在しているため、開業当初は、ドイツ製タンク機関車を導入していた九州鉄道においても、これらの機関車の存在が、アメリカ製へ転換するきっかけになったと考えられる。
その後、九州鉄道では、アメリカSchenctady製を好み、同社の2B形テンダ機関車5700形、1D形テンダ機関車9500形、1C形テンダ機関車8550形を導入している。旅客用の5700形は36両、貨物用の8550形は61両が導入され、九州鉄道の主力機関車として活躍した。
生産技術
<形式:8200(初代)>
・軸配置・機関車形態:1C形テンダ機関車
・製造会社:Baldwin(米国)
・製造年度・両数:1896年(4両)
・機関車質量:36.5t(軸重10.2t)
・動輪直径:1270mm
<形式:9500>
・軸配置・機関車形態:1D形テンダ機関車
・製造会社:Baldwin(米国)
・製造年度・両数:1898年(12両)
・機関車質量:42.6t(軸重11.7t)
・動輪直径:1219mm
時代背景
1870年代から1890年代に掛けて、アメリカは、後に“Gilded Age”と呼ばれる経済成長の時代となり、機械工業化は英国を超える状態であった。特に鉄道や鉱山など重工業の発展がめざましかった。1869年には最初の大陸横断鉄道が開通し、その後も多くの鉄道網が整備されたことによって国内の物流が大きく進歩した。
また、鉄鋼の年間生産量は、英国、ドイツ及びフランスの3カ国を合わせた生産量をも超える状態であった。
鉄道網の拡大、製鉄産業の盛況は、米国最大の機関車製造会社のBaldwinを始めとする多くの機関車製造会社にも活力を与え、国内需要のみならず、機関車の輸出が盛んになっていた。この時代、鉄鋼王アンドリュー・カーネギー、石油王ジョン・ロックフェラー、鉱山王グッゲンハイム、鉄道開発・投資のジェイ・グールド、金融業のJ・P・モルガン、自動車のフォードなど名立たる富豪が輩出した。[“Gilded Age”の呼称は、同時代の光と闇を描いたマーク・トゥインとチャールズ・ダッドリー・ワーナーの共著“The Gilded Age”から来ている。]
記事
*旅客列車用2Bテンダ機関車
<形式:5700>
・軸配置・機関車形態:2B形テンダ機関車
・製造会社:Schenectady(米国)
・製造年度・両数:1897年(12両)・1899年(24両)
・機関車質量:35.6〜37.4t(軸重12.2〜12.7t)
・動輪直径:1372mm
・記事:九州鉄道36両以外にも、鉄道作業局9両、北海道炭鉱鉄道12両が導入されたが、それぞれの機関車質量及び軸重は上記の数値のようにばらつきがあった。
*8200形(初代)を大きくした1C形テンダ機関車
<形式:8550>
・軸配置・機関車形態:1C形テンダ機関車
・製造会社:Schenectady(米国)
・製造年度・両数:1900〜07年(61両)
・機関車質量:41.6t(軸重12.3t)
・動輪直径:1370mm